Vol.3で「指示・注意の言葉がけを減らし、褒める・共感する言葉がけを増やしましょう」という話をしましたが、このうち「褒める」ことは意外と難しいのです。
例えば、いつも始まりの会のときに着席せず一人走り回っていたAくんが、今日は指導員の促しでみんなと一緒に席に座ることができた。本人なりに頑張って切り替えられたことをぜひとも褒めてあげたいところです。が、流してしまう指導員が多いです。なぜならその人の中に「座るのは当たり前のこと」という認識があるからです。
「自分が無意識に設定している『褒める基準』を、相手が満たさない限りは褒めない」という形に陥りがちなのが「褒める」の難しいところです。この場合、ルールを守らなかったり問題を起こす子ほど基準をみたさないので、指導員としては「褒めようとしても褒めるべきところが見つからない」となってしまいます。
本当は、自分(指導員)軸の「褒める基準」を捨てて、その子なりの基準で、頑張ったこと・できたことを褒めてあげられるとよいのですが、それは一朝一夕にはできるようになりません。
そこで重視したいのが「共感する言葉がけ」です。その子がやっていること・興味をもっていることに共感を寄せ、その気持を言葉で表現することです。
たとえば、
「(塗り絵をしている子に)いろんな色が塗ってあってきれいだなぁ。髪の毛は何色で塗るの?」
「キミがつけているマスクの柄、炭治郎が着ている服と同じ模様だね。鬼滅の刃が好きなの?」
といった具合です。対象は何でもよいのです。その点、褒めることに比べて言葉がけのきっかけが見出しやすいです。
こうした言葉がけがあることで、お子さんは「自分は気にかけてもらえている」「自分は注目されている」と感じられ、安心して自分の遊びや課題に取り組むことができます。
また指導員にとって、こうした「共感の言葉がけ」を心がけることは、「子どもの立場にたって考える・感じる」ことの最初の一歩になります。
共感の言葉がけを続ける過程で、そのお子さんが何がどれくらいできるのか、また何を頑張っているのかが見えてきます。その先で子ども基準で褒めることができるようになってくるのです。
褒めることが難しければ、まずは共感の言葉がけから始めてみましょう。