上司や他の支援員にその日あった出来事やお子さんの様子を伝える際、よくアドバイスさせていただくのが「言葉の解像度をあげましょう」ということです。
具体的には、口頭でも文章でも以下の3つのポイントを明確にするようにお伝えします。
1.主語を明確に
2.いつ起きたことなのか明確に
3.行動ベースで具体的に
これらのポイントが守られないとどのような報告になってしまうか、NG例を紹介します。
Aくんが自由時間にほかの子にワーッと行っちゃうものだから怒られちゃって、イライラして物にあたるんだけど、注意しても言うことを聞かずにますます暴れてしまって手が付けられません。
こうした報告では、お子さんの様子も周囲の状況も漠然としかわからず、一つ一つの対応が妥当だったのか、次に同じようなできごとがあったときにどんな対応をすればよいのか、明確になりません。
つぎに、この報告を上記の3要素を意識した形で書き直してみます。
Aくんが自由時間に、Bさんが新しいおもちゃで遊んでいるのをみて、「僕もやる!」といってBさんの手からおもちゃを奪い取ってしまいました。
Bさんは「返して!」といって彼からおもちゃを奪い返したので、Aくんは地団駄を踏んで、棚の上に並べてあったおもちゃを手でなぎ倒してしまいました。
それを見ていたC支援員が、「おもちゃをもとにもどしなさい」と注意をしましたが、Aくんは「うるせえ!」と言って、C支援員におもちゃを投げつけてしまいました。
報告を通じて浮かびあがってくる当時の状況の解像度が全く違うことがわかると思います。
報告がわかりやすければ対策も立てやすい
こうした報告であれば、
- 新しいおもちゃをBさんにだけ提示することは適切だったか?
- AさんBさんのトラブルにどの支援員も対応しなかったのはなぜか?
- C支援員はいきなり注意するのではなく、まず彼の気持ちを聞くべきだったのでは?
- おもちゃを投げるのは物理的な危険を伴うので、優先的に対策を検討すべき
といったように、次回の対応につながる振り返りを行うことができます。
お互いに問いかけあう組織文化を
もちろん、現場で忙しく働く支援員のみなさんが、常にこれだけ解像度高く報告をすることは困難です。
ですから報告を受けたり振り返りを行う中で、お互いに、
「誰がそれをしたのですか?」
「いつそれが起きたのですか?」
「具体的にはどんな行動が見られたのですか?」
と問いかけていく習慣をつけ、事業所として説明の解像度をあげていく組織文化を作ることが大切です。
上記3点すべてをいきなり意識するのが難しいということであれば、まずは「1.主語を明確に」することから初めてみるのがいいでしょう。
放課後等デイにはたくさんの子どもたちに複数の支援員が対応します。
誰が何をして、そこに誰が何を言ったのか、主語を明らかにするだけでも話がぐっとわかりやすくなり、行き違いもなくなります。