Vol.11 新事業所開設時のポイント お子さんの振り分け

今回は複数の放課後等デイサービスの経営者さんから「今のうちに聞いておいて良かった!」と言われたポイントを解説します。

近隣で新しい事業所を開設しようとするときによく聞かれるのが、「事業所ごとお子さんの年齢や発達段階を揃えたほうがいいのだろうか?」というご質問です。

確かに、放課後等デイサービスの運営の難しさの一つは、幅広い年齢・発達段階のお子さんに対して対応しなければならないことにあります。お子さんの年齢や発達段階が揃っていれば、用意する活動や課題も絞り込めますし、支援員の専門性もその年代にあわせた形で深めていけるメリットは計り知れません。しかし、これまで様々な法人様の相談にのってきた経験からすると、事業所ごとにお子さんの年齢や発達段階を揃えるのはそれ以上にデメリットのほうが大きいと感じています。

そのデメリットとは、より年齢や発達段階の低いお子さんが通う事業所に過分な負担がかかり、支援員の中に不公平感が生まれてしまうことです。

年齢で分けた場合、小学校低学年で揃えた事業所は、お子さんが強い衝動性や多動性を示す傾向が強くなります。これらの特性は年齢があがるごとに減弱していく傾向がありますが、それだけに低学年で揃えた事業所は、より年齢が高い子の通う事業所に比べて、走り回る子、手が出てしまう子、思いつきで行動する子が多くなり集団活動が困難になってしまうほどの混乱に陥ってしまう傾向にあります。

また発達段階に着目すると、言語による指示理解が難しい「感覚ー運動期」(太田ステージⅡ以下、健常児の2歳以下)の認知発達段階にあるお子さんの場合、支援員が1対1で支援しなければならない場面が多く、こうしたお子さんが複数利用する場合、支援員の負担は大きくなります。

このように、年齢や発達段階でわけるとどうしても低い方の事業所に負担がかかってしまい、その事業所の支援員から不満が出やすく、離職率も高くなってしまいがちなのです。もちろん所属する支援員の数を増やすことでこうした困難に対応することも考えられますが、その場合他事業所に比べて人件費がかさんでしまうため、経営者サイドから見ると得られる収益が低くなり、どこまで人件費をかけるべきなのか経営判断が難しくなります。

 

他方、送迎を行っている事業所さんについては、メリットしかない振り分け方があります。それはお子さんの所属する学校や自宅の方向で揃えるということです。そうすることによって、迎えに出る学校の数や方向、送り先の自宅の方向を絞り込むことができます。そうすれば送迎の時間や送迎に出る車の台数も減らすことができ、お子さんの発達支援の時間をより多く取ることができる上、職員の負担も軽減することができます。

これまでお話してきた内容をもとに、新事業所開設時のお子さんの振り分け方を考えると

  • 学校に迎えにでる方向や自宅に送る方向が揃うように振り分けるのがベスト(送迎ありの事業所の場合)
  • ただし事業所ごとに利用するお子さんの年齢や発達段階が、支援員の負担に大きな違いがでるほど偏らないよう配慮する
  • 上記2点を外さない範囲で、支援の質向上のために、事業所ごと特定の年齢や発達段階に一定の重み付けをするのは良い

という基準で考えていくと効率的な支援が実現できると考えられます。